明和水産
世間からも知られず、それでいてなぜか人生の負け組が自然と集まるインターネット掲示板。
兵庫県の片田舎に柏原という地がある。農業が主な産業であり辺り一面田んぼが広がる。
町のシンボルである柏原八幡神社は地元の人からは「かいまんさん」と親しまれ、柏原の誇りだ。
それを支えるかのように、麓には城下町の名残を残す古い町並み。初めて来た者にも何か懐かしさを感じさせる。
町の中心を走るJR柏原駅は田舎ながら多くの住民の足を支えている。
「典男、ご飯できたでよ。おりといで。」
特別な返事もなく、他愛な会話もなく、典夫は年老いた母親が作った質素な芋煮で白米を食べる。
世間では芋煮がおかずにならないことは典男も分かっている。家は貧乏、自分も無職。あまり何かを言える立場ではない。ただそれを食べるしかなかった。
しかし子供のころからこれで育ってきた体はそれに適応をするのだ。ただ昔から味付けは少し濃い目だった。
テレビでは新年におこった震災のニュースも少なくなり、昨日も見たような芸人が何かを言ったと思えば、周りの芸能人が笑っている。テレビから聞こえる笑い声、それ以外は何も聞こえない。
6畳ほどの食卓はいつのまにかファンヒーターも消えていた。
二人にはやや大きい冷蔵庫、何年も使っていない食器が並ぶ棚、テーブルの上には古びた電子レンジ。壁は長年の汚れとも色褪せたとも言えるくすんだ色をしている。
冷蔵庫には醤油、電池、卵と書かれたメモと磁石がついていた。
「あんた、今日は職安行ったんか?」
返信する