とある金持ちの御曹司、エリオット・ローズウォーターがその資産を使って、無償の愛を人々に施そうとする。
ブラックユーモアをふんだんに湛えたドタバタ的ストーリー。上流階級の人間の他に、たくさんのエリオットに関係する貧しい人が現れます。
彼らは確かに、全く助けるに値しないような人々なのかもしれません。そのような彼らのつまらない日常や、無能ぶりをいちいちしっかり描写します。
ところが、彼らの人生の背景を知れば知るほど、そのような貧しい無能な人々への何らかの憐れみ、あるいは同情のようなものが湧いてきます。
それこそが、大金持ちのエリオットを動かす心情となります。
ところが、その当のエリオットという人は、全く聖人君子という感じではなく、どちらかというと半分とぼけたような人物。
作中でも、戦争で過酷な経験をしてから精神を病んでしまった、と周囲からは思われているのです。
実際、エリオットは多くの人に施しを与えたのに、自分自身は何をしたのか全く覚えていない。
街の人に「助かりました」と声をかけられてもそれが誰だか覚えていないのです。
この寓話的な話が示唆するのは、お金、貧しさ、人間の価値、といったようなものの相関です。
貧しくて下劣な人間は助ける必要のない人間なのか?読者に問いかけているわけです。
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