本の中で出会った名言のスレ


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001 2013/06/02(日) 11:48:38 ID:bUHZ.yuTlQ
「少しは懲りたかね」
「ええ、そうですね」
 門番はにやりと笑って把手の上に載せた足の位置を入れかえた。「懲りるのは良いことだ。
人は懲りると用心深くなる。用心深くなると怪我をしなくなる。良いキコリというのは体に
ひとつだけ傷を持っているもんさ。それ以上でもなく、それ以下でもない。ひとつだけさ。
俺の言っていることはあんたわかるよな?」
 僕は肯いた。

        (「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」村上春樹著 より)
 

https://www.youtube.com/watch?v=tqRGkucgclw

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002 2013/06/02(日) 12:11:36 ID:Ub1iqJc5wo
なるほど、本で出会った、恥ずかしい文章を書くスレだな?


「宇宙のことはよく知らない。でもそのときの僕らには、
それがすごく大事なことに思えたんだ。僕らのあいだに
生じた特別なケミストリーを大事に譲っていくこと。風
の中でマッチの火を消さないみたいに」

  『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上ハゲ樹

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003 2013/06/02(日) 16:16:38 ID:A6FrDWETI6
 彼女が性行為の大半の部分をリードした。天吾はほとんど何も考えず、彼女に指示
されるままに行動した。何を選択する必要もなく、判断する必要もなかった。彼に要
求されているのはふたつだけだった。ペニスを硬くしておくことと、射精のタイミン
グを間違えないことだ。「まだだめよ。もう少し我慢して」と言われれば、全力を尽
くして我慢した。「さあ今よ。ほら、早く来て」と耳元で囁かれると、その地点で的
確に、できるだけ激しく射精した。そうすれば彼女は天吾をほめてくれた。頬を優し
く撫でながら、天吾くん、あなたって素晴らしいわよ、と言ってくれた。そして的確
さの追求は、天吾が生来得意とする分野のひとつだった。正しい句読点を打ったり、
最短距離の数式を見つけ出すこともそこに含まれる。
(中略)
 その日も彼女は黒い下着の上下を身につけていた。そして彼に入念なフェラチオを
した。そして彼のペニスの硬さと、睾丸のやわらかさを心ゆくまで愉しんでいた。黒
いレースのブラジャーに包まれた彼女の乳房が、口の動きにあわせて上下するのを、
天吾は目にすることができた。彼は早すぎる射精を避けるために、目を閉じてギリヤ
ーク人のことを考えた。

村上春樹「1Q84」より

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004 2013/06/02(日) 16:36:53 ID:/4U1t5GxkY
 はしけはひどく揺れた。踊子はやはり唇をきっと閉じたまま一方を見つめていた。私が縄
梯子に捉まろうとして振り返った時、さよならを言おうとしたが、それも止して、もう一ぺ
んただうなづいて見せた。はしけが帰って行った。栄吉はさっき私がやったばかりの鳥打帽
をしきりに振っていた。ずっと遠ざかってから踊子が白いものを振り始めた。
 汽船が下田の海を出て伊豆半島の南端がうしろに消えて行くまで、私は欄干に凭れて沖の
大島を一心に眺めていた。踊子に別れたのは遠い昔であるような気持だった。婆さんはどう
したかと船室を覗いてみると、もう人々が車座に取り囲んで、いろいろと慰めているらしか
った。私は安心して、その隣りの船室にはいった。相模灘は波が高かった。坐っていると、
時々左右に倒れた。船員が小さい金だらいを配って廻った。私はカバンを枕にして横たわっ
た。頭が空っぽで時間というものを感じなかった。涙がぽろぽろカバンに流れた。頬が冷た
いのでカバンを裏返しにした程だった。私の横に少年が寝ていた。河津の工場主の息子で入
学準備に東京へ行くのだったから、一高の制帽をかぶっている私に好意を感じたらしかった。
少し話してから彼は言った。
「何か御不幸でもおありになったのですか」
「いいえ、今人に別れて来たんです」
 私は非常に素直に言った。泣いているのを見られても平気だった。私は何も考えていなか
った。ただ清々しい満足の中に静かに眠っているようだった。

川端康成「伊豆の踊子」より

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