この人の著書『死体がゆっくりやってくる 』(1978年・ソノラマ文庫)は、
たしか、こんな内容だったと思う……荒馬と是馬兄弟が、なけなしの小遣いをはたいて食料品を買い、
どこかの河原にキャンプしに行く。
ひょんなことから大きな西洋風の屋敷を見つけ、中に入るとドラキュラやら狼男が出てくる……
題名がゾンビものを彷彿とさせ、ホラー好きのおれは嬉々として頁をめくったものだ。
ところが、途中で本を真っ二つに破りたくなった。というのも、こんなくだりがあるのだ。
「私ならこんな怖いことはしない。なぜなら私はこんな小説を書いているくせに、
大の怖がりなのだ。実はこの原稿も夜ではなく、昼間に執筆しているのだ。」
この他にもフザけた作者がしゃしゃり出て、しょせんこの小説は絵空事なんだと白けさせる。
我慢してどうにか読み進めていったものの、例の西洋風の屋敷のあたりからドタバタな
ノリになったため、おれの怒りは頂点に達し、ソッコーで読むのをやめた。
この程度の小説ならオレでも書けるわ!
作者は昭和5年の生まれとあるが、つまり戦争経験者じゃないか!
この腰抜け野郎、戦時中どこに隠れてた! 軍法会議にかけてやる!
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