村上春樹スレ

作家の資質は、処女作の中に集約されているという奥野建夫氏の言葉を衒って言う訳ではないのですが、
『風の歌を聴け』の存在は大きい。好きなのは、あとがき。季節は秋、神宮球場の外野席。順位も決定した、シーズン終幕間近の
ヤクルト広島のデーゲーム。缶ビールを飲みながら芝生にゴロゴロしつつ、グラウンドへ目を向けている自分。そこには、誰もが
持ちうる日常の中のふとしたエアポケット的な描写がなされている。その情景の中で小説を書こうと思い立ち、以後、
バーカウンターの中で小説を書き始めたなど、この処女作書き上げた経緯が、このあとがきに描かれているのは誰もが知るところです。
実際、『風の歌を聴け』は、このあとがきの存在は圧倒的で、それは「この人の書く小説はこういう雰囲気だろう」というようなものです。
小説や詩などは、プロットやコンセプト的なものは、作品の具体的な感想を他者へ伝えるときの説明として伝わりやすく、一定の評価基準にもなります。それは作品を語る場合の多く用いられる要素であります。
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